変身◆Transformation in vain
ある日私は
私でいることに耐え切れず
いっそこの皮膚をすっかり剥いで
別の生き物に生まれ変わろうと
体の中心に一本の線を引き
ひんやりとしたナイフの先で皮膚をなぞった
すると刃が触れた切那
皮膚から筋膜までめくれ上がり
そのもも色の裂け目から
小さな叫びが産まれ出て
私の鼓膜へ飛び込んだ
叫びはがらんどうの体の中で反響し
微細な球体に分裂すると
血流に乗って体の隅々まで運ばれていき
細胞の一つ一つに入り込み
DNAを書き換えようと企むのだけれど
その行為を阻止する因子によって
変身は妨げられた
やがて私は裂けた皮膚を
ひと針ひと針
苦渋の糸で縫い合わすのだ
by wind-walker | 2006-05-21 00:39 | 心象風景