<   2007年 05月 ( 2 )   > この月の画像一覧

 

端末



   反転された文字列から入口を探す
   隠された仮想領域のことばを狩りに
   ほの白い闇に明滅する極小級数の記号は
   ところどころ渦を巻いてわたしを惑わせる
   黒色星雲の配置にならい なぞるカーソル
   の上に立ち現れる闇

   変換されるものと されないものの間で
   蠢いている見えざる手の記憶
   投影された形をさぐる端末の上に
   おぼろげに凝固していく死人の輪郭
   蒼白の顔面に針を突きたて
   開閉動作を不規則に繰り返しながら
   真夜中の回路をしずしずと進んでいく

   見えないことと混乱はつがいのように機能し
   憂いが空間に結ばれて
   人々の影がむなしく交差する
   異なる心と性の社交場で芽生える愛
   ときに紡がれては距離を一瞬で跨ぎ越し
   抒情はたおやかに語り継がれる

   増設された魂のメモリに
   窓の外 しめやかに雨は降り注ぎ
   深々と更けていく夜のしじまに
   端末は唸りを上げて
   幻を活写する
   
     
   
  
   
   
   
[PR]

  by wind-walker | 2007-05-23 21:22 | 心象風景

暗渠

   
    わたしたちのうつくしい夏は過ぎ去り
    ただ ぎらぎらとした陽炎ばかりが
    道すじに燃え残っているけれど
    二度とあうことのない確信は
    耳元で鳴る音叉のように
    気だるい波紋をいくえにも広げて
    記憶の皮膜を削ぎとっていく

    あの日 斜面を駆けおりた
    いとけない子どもの魂は
    わたしの心に緑の聖痕をきざみ
    高らかに響かせた喉笛で
    いのちの切っ先を天空へ向け
    飛行する鳥群れまで切り裂いたのだ

    いとしい微かなさびしささえ
    子犬のように飼いならし あなたは
    諧謔のうぶ着にくるんで薄闇に解き放った
    けれども――
    体に裂け目を持つわたしたちは
    帯電した流れ込む粒子を
    たがいに暗渠のようにのみこんで
    下方へとあふれさせただけだった

    やがて石の中で水がよどみ
    樹木の中で火が燃えだし
    わたしたちはどちらともなく目を伏せて
    つないだ手と手を離したのだった
        
    じっとりと露にぬれた草むらの奥で
    かぼそい水脈が生まれでて
    傍らの側溝へ注がれていく
    ちろちろと小さな舌でわたしを浸すと
    暗がりに嵩をたたえた地底の沼へと
    水は音もなくのまれていった


    
[PR]

  by wind-walker | 2007-05-17 17:36 | 心象風景

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE