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廃墟島へ



   翻る黒髪 目蓋打つ白き飛沫
   おののく好奇が船上を支配し
   まさに航跡に雪崩落ちようとするとき
   はるか前方
   絶えまなく湧き立つ海の回廊から
   ひとつの島影がせり上がる
   内没と狂気の閃光を孕み
   自足する世界の辺縁で
   なお朽ちながら生きている都市の
   鬱々として定まらぬ藍鉄の層(こし)
      
   ひしめく鉄骨の怜悧な骨組み
   あるいは望楼の下の石壁の肌理に
   穿たれた塩水の歳月の刻印  
   潮風の暴虐が引き裂いた
   格子窓の序列とそのリズム
   亡霊じみた曖昧さで林立する
   高層住宅の窓々から
   つぶてのように飛来する何ものかの視線
   不死者の圧倒する威厳 
      
   不在の時は醸成され
   その放逐の断層がひときわ鮮明な護岸の果てに
   おぼつかぬ足取りでたどり着くもの
   瓦礫の隘路に迷いながら
   なおも活路をもとめて虚空に風穴を開けるもの
   その顕わな意志が
   孤島の廃墟を照らすとき
   透明な冒険者はその際に下り立つ
   
      
   
   
   
   
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  by wind-walker | 2007-04-26 14:19 | 心象風景

喪花


 

         弔いの言葉が捌かれて
         彼らはそれを咀嚼する
         通約された痛みの淵に
         紫紺のループを描きながら
         桜は
         自らの闇に向かって落下する


         蒼ざめた幹の震央で
         萌えいづる芽がふるえ出し
         無限の射程の前に頽れる
         その刹那
         予兆は増幅されて
         彼らのしめやかな葬送がはじまる


         散り敷かれた花の上を
         脚の萎えた人の歩調で歩む
         この春の冷気の奥底で
         虚しい深みへと向かった
         流された血のことを想う

        (私たちはただ
         嘆くことしかできないのですか)

 
         晴れわたる空の中に
         桜色の悲哀が透けている
  
         春の溶暗



 
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  by wind-walker | 2007-04-19 22:22 | 心象風景

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