カテゴリ:風のわだち( 9 )

 

匍匐の夜

  

  草の葉を噛みながら進んだ
  狡猾な蟐蛾の三日月の下
  浸潤する夜の裳裾とたわむれ
  潮風に臭気をさらして干乾びる
  蛇行する隘路の果てには
  屠られた白き幽愁
  

  高波に洗われるトーチカの群に
  重ねた記憶の襞を這いのぼる陰鬱な影ひとつ
  波音におののき塞いだ内耳の奥から
  容赦なく降り注ぐ銃弾の旋律
  閉じた鼓膜を外へと突きぬけ
  岸辺射る閃光の断末魔にも似た轟きを
  紫紺の海へ 
  そして黒紅の空へと還す

  えぐられた洞門の砂に身を横たえ
  錆びた鉄鎖の唇音を聴いた
  鬱蒼たる草木にのまれた砲の墓場に
  水銀の露は降りて
  ものみな沈思する夜の奥底から
  馥郁とした香り立ち昇る
  戦跡の入り江に

  はるか東方の波の底に
  新しき朝はまどろみ
  終焉の始まりを告げて
  匍匐の夜が明ける
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  by wind-walker | 2006-12-19 01:57 | 風のわだち

竹富紀行-4

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  by wind-walker | 2006-04-25 22:10 | 風のわだち

竹富紀行-3

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  by wind-walker | 2006-04-25 22:08 | 風のわだち

竹富紀行-2

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  by wind-walker | 2006-04-25 22:06 | 風のわだち

竹富紀行-1

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  by wind-walker | 2006-04-25 22:04 | 風のわだち

墓場◆Epitaph for the hollow words

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             書かれるべきことが十分に書かれないと
    
             言葉は空しくなり

             書かれたことが存分に読まれないと

             言葉は哀しくなり

             その存在する意味を失う



             そのとき言葉はただのでたらめな記号となり

             でたらめな記号の配列の謎は
 
             だれからも顧みられることなく

             底なしの井戸に葬られる



             これら陵辱された言葉たちのために

             今宵 葬礼の花を手向けよう
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  by wind-walker | 2006-02-07 11:19 | 風のわだち

鳥◆Soul within

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       はぁとを一つくださいなと

       風わたりが来て言いました

       探さなかったのかいと 賢い人は言いました

       探したけれど見つからなかったと 風わたりは答えました

       探したところを言ってごらんと 賢い人がたずねました

       土の中 雲の上 水の底 森の影 

       心当たりは探したけれど どこにも見つからなかったよ



       おやおや それじゃあやり直し

       探すところを間違えてる それでは見つかるはずがない

       ほらほらそこに きれいな声で歌ってる

       小さな鳥がいるだろう

       どこ どこ どこにと 風わたりは聞きました



       そこ そこ そこさと 賢い人は言いました

       きみの中で歌ってる けな気な小さな鳥のこと

       探し物はそれじゃないかな・・・
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  by wind-walker | 2006-01-26 11:08 | 風のわだち

ストーブ◆Fireplace



        風のつよい晩に

        ストーブにあたった

        じんわりと熱の輪がひろがって

        毛穴から体の芯まであたたまった



        心地よい熱のなかで

        うつらうつらしていると

        わたしの影法師から

        いのちがふわりと抜けでて

        白熱灯の光のなかを飛びまわった

        軽やかな小鳥のように



        なみだが出た

        シチューに入れる

        たまねぎのせいじゃない
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  by wind-walker | 2006-01-22 22:19 | 風のわだち

生きること 死ぬこと◆Lost, yet hoping

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           生きていること 死ぬことの不思議
           さなぎのような体の中に 
           閉じ込められた私の意識
           息を吸うたび膨らむ胸郭 
           心地よい空気の移動
           耳の奥で脈打つ血のうねり
           私にしか聞こえない 秘密のリズム
           刻む時 落ちる砂
           流砂のように変化する景色



           なのに友は死んだ
           桧原村の山林の中で
           家族が触れた頬はまだ温かかった
           魂はとうに去っていたというのに
           お葬式ではみんなが眼を伏せ
           気味が悪いほど寡黙だった
           嗚咽を漏らすのさえ 気が咎めるほどに
           ただ彼らの善良な両親だけが
           はらはらととめどなく涙を流し
           白菊の上に透き通った露をこぼしたのだった



           あれから何年経っただろうか
           それでも私は生きている
           消え入りそうな焚き火に 今日の糧をくべ
           ほそぼそと希望をつなぎながら



           私は死ねなかったのだ
           私の心臓が あまりにも健気に働くから
           私の両肺が あまりにも必死に膨らむから
           私は死ねなかったのだ
           私の血管が あまりにも力強く脈打ちながら
           「生きて 生きて」 と囁くから
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  by wind-walker | 2006-01-17 22:39 | 風のわだち

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