廃墟島へ



   翻る黒髪 目蓋打つ白き飛沫
   おののく好奇が船上を支配し
   まさに航跡に雪崩落ちようとするとき
   はるか前方
   絶えまなく湧き立つ海の回廊から
   ひとつの島影がせり上がる
   内没と狂気の閃光を孕み
   自足する世界の辺縁で
   なお朽ちながら生きている都市の
   鬱々として定まらぬ藍鉄の層(こし)
      
   ひしめく鉄骨の怜悧な骨組み
   あるいは望楼の下の石壁の肌理に
   穿たれた塩水の歳月の刻印  
   潮風の暴虐が引き裂いた
   格子窓の序列とそのリズム
   亡霊じみた曖昧さで林立する
   高層住宅の窓々から
   つぶてのように飛来する何ものかの視線
   不死者の圧倒する威厳 
      
   不在の時は醸成され
   その放逐の断層がひときわ鮮明な護岸の果てに
   おぼつかぬ足取りでたどり着くもの
   瓦礫の隘路に迷いながら
   なおも活路をもとめて虚空に風穴を開けるもの
   その顕わな意志が
   孤島の廃墟を照らすとき
   透明な冒険者はその際に下り立つ
   
      
   
   
   
   
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  by wind-walker | 2007-04-26 14:19 | 心象風景

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