匍匐の夜

  

  草の葉を噛みながら進んだ
  狡猾な蟐蛾の三日月の下
  浸潤する夜の裳裾とたわむれ
  潮風に臭気をさらして干乾びる
  蛇行する隘路の果てには
  屠られた白き幽愁
  

  高波に洗われるトーチカの群に
  重ねた記憶の襞を這いのぼる陰鬱な影ひとつ
  波音におののき塞いだ内耳の奥から
  容赦なく降り注ぐ銃弾の旋律
  閉じた鼓膜を外へと突きぬけ
  岸辺射る閃光の断末魔にも似た轟きを
  紫紺の海へ 
  そして黒紅の空へと還す

  えぐられた洞門の砂に身を横たえ
  錆びた鉄鎖の唇音を聴いた
  鬱蒼たる草木にのまれた砲の墓場に
  水銀の露は降りて
  ものみな沈思する夜の奥底から
  馥郁とした香り立ち昇る
  戦跡の入り江に

  はるか東方の波の底に
  新しき朝はまどろみ
  終焉の始まりを告げて
  匍匐の夜が明ける
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  by wind-walker | 2006-12-19 01:57 | 風のわだち

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