廃墟愛◆Taste of decay

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            干からびた茎から緑を噴き出し

            壁伝いに伸び広がり、増殖を繰り返し

            くまなく覆いかぶさる

            蔦の旺盛な繁茂



            草茂る陰気な庭の片隅

            名も知れぬ赤い実に群がり、啄ばみ

            小躍りしてさえずる

            鳥たちの陽気な輪舞



            さらに

            枯れた棕櫚の梢を吹きわたり

            見えない世界の果てから、気前よく

            香りと喧騒を運んでくる

            風の爽快なひと撫で



            それら命あるものの前で

            すべもなく朽ちていく廃屋の

            美しくも無力な佇まい

            深く穿たれた二つの窓に

            夕陽の朱が灯るとき

            潰えた時の残照に

            私の胸は痛み出す



            あぁ廃屋の――

            ひび割れた土壁、踏み抜いた床板

            飛散したガラス、剥がれたペンキ

            止まった時計、錆びた金属

            瓦礫の廊下、壊れた遊具

            したたる水滴、苔むす絨毯

            漏れ入る陽光、朽ちた窓枠――



            それら物たちの墓場の

            夕闇に覆われるとき

            私は寡婦のように泣き崩れ
  
            寂しいひとつの影になる






           
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  by wind-walker | 2006-06-12 10:02 | 心象風景

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