水没都市◆Water City

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              薄闇のなかで煙っているのは

              発光するわたしの、産毛にかかる氷雨

              ヒールを脱ぎ捨て、アスファルトに踏み出す素足は

              ぴしゃりぴしゃり

              水溜りに滲んだネオンを攪拌する

              ぐっしょりと水を吸ったドレスの裾は

              まるで死んだ魚類の、濡れそぼった尾びれのよう


              水に侵された都市の底では
 
              管という管が大水を吐き出し

              傘のない男たちは、地上へと走る

              (走った先で彼らは水の味のする飲料を

              そうとも知らずに飲み続けるのだ)


              水は世界を反転させ

              反転した世界の王は

              地下にある秘密の巨大水槽に君臨する

              王国の壁は厚いので

              放水路が放つ数億トンの水にも

              びくともしない
           

              水はいよいよ川のごとく街路を流れ

              池や堀や用水路さえも

              等しく川の一部になった

              やがて水は、わたしの脚から腰

              腰から胸

              胸から肩へと嵩を増し

              喉の奥へと押し寄せた

              こうしてわたしは内と外から

              水に溺れた




              反転した世界の底で

              わたしは最も下等な魚類となり

              地下王国の玉座の前にひれ伏すだろう
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  by wind-walker | 2006-06-01 23:14 | 心象風景

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